ロシアの前大統領、ボリス・エリツィン氏が23日、持病の心臓病悪化による心不全のため亡くなりました。76歳でした。
「エリツィン氏は初代ロシア大統領となり、多くのことを初めて成し遂げた偉大な人物でした」(ロシア国営テレビ)
ロシアのメディアは夕方から夜のニュースにかけて、エリツィン氏の死亡をトップで報じ、印象的な数々の政治的な場面をドキュメントで流しました。
しかし、イタルタス通信は、「退任にあたって国民に謝罪した、ただ一人の政治家」と論評し、政敵ともいえたゴルバチョフ元ソ連大統領は、「彼は悲劇的な最期を遂げた」とのコメントを寄せるなど、その死に対する反応は淡々としています。
保守派のクーデターを身をもって阻止したり、陽気な振る舞いなどから、当初はロシア国民に受け入れられたものの、新興財閥との癒着や、経済危機の打開に失敗するなど、最後は「ロシアに混乱をもたらした人物」との烙印を押された格好でした。
強権的とも言える政治手法を貫き通すプーチン大統領が、いま国民の高い支持を受け続けているのも、「エリツィン時代の混乱は2度と避けたい」という思いが、国民の中に反面教師として働いているためです。
エリツィン氏の死は、自由よりも安定を求めるロシアの多くの国民にとって、過ぎ去った悪夢の時代に終止符を打つ意味しかないのかもしれません。(24日04:10)